研究概要 |
レドックス反応(酸化還元反応)は、生物が生命活動を営む上で極めて重要である。生体内で生じるレドックス反応が、細胞の増殖、分化、細胞周期制御をはじめとする様々な生命現象に密接に関与することが明らかとされてきており、その詳細に関する関心は、益々高まりを見せている。生体内レドックス反応の本質には、種々の活性酸素種(Reactive Oxygen Species : ROS)が深く関与しており、その産生異常は生体内レドックス反応の均衡を破綻させることから、生物個体における多様な疾病や癌化に繋がると考えられている。従って、生体内レドックス状態の解析、更にはその疾病・癌化との関連性解明のため、現在、生体内ROSの産生をモニタリングする手法の開発が非常に重要な課題となっている。そこで本研究では、生体内ROSの産生を計測可能な新たな蛍光試薬の開発を試みた。今年度は、蛍光基ユニットであるシアニン化合物に対し、酸化還元ユニットであるキノン化合物を結合した新規蛍光試薬の合成を行った。まず、1,1,3,3-テトラメトキシプロパン及び2,3,3-トリメチルインドレニンを出発原料とし、カルボキシル基を導入したシアニン化合物を合成した。次に、1,4-ナフトキノンを出発原料として、アミノ基を導入したキノン化合物を合成した。両者をアミドカップリングにより結合し、目的とした蛍光試薬を得た。化合物の同定は、核磁気共鳴スペクトル測定及び質量分析測定により行った。
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