従来、標識や分子マーカーを必要とするDNA中のSNPs計測を、DNA中の各々の核酸塩基を同時に、識別、定量可能なナノカーボン薄膜電極を利用して、電気化学的に高感度に直接検出する簡便な方法を実現することを目的とし、以下の点を明らかにした。 1. ナノカーボン薄膜一核酸塩基間の電気化学特性の把握と膜表面の最適化 ナノカーボン薄膜の全核酸塩基に対する電極活性を向上させるため、薄膜表面物性と核酸塩基の電子移動速度定数の関係性に着目し、膜表面の最適化を検討した。電気化学手法によりナノカーボン表面にその表面平坦性を保持したまま酸素官能基を導入でき、かつこれにより全核酸塩基の電子移動速度が向上することを見出した。その際、膜活性化前後の核酸塩基の速度定数を回転ディスク電極法によって算出し、ナノカーボン表面と全核酸塩基の電子移動速度定数との相関性を得ることができた。さらには、活性化によってナノカーボン電極表面への吸着を抑制でき、直接計測においても一24mer程度までのDNA鎖長であれば、安定に定量可能であることを確認した。また電極の高感度化を図る目的で、フォトリソグラフィー技術にてナノカーボン薄膜のアレイ電極化を検討した。電極面積を直系10pm以下に微小化することで、S/N比が13倍に向上できることを見出した。 2. 実在遺伝子に基づく塩基配列中のSNP部位の直接電気化学検出の予備検討 ハイブリダイゼーション法とDNA分解酵素反応により対象領域のDNA断片を抽出・回収する予備検討を行った。上記1で把握した安定な直接計測(~24mer)とハイブリダイゼーションの安定性の観点から、適当なDNA断片長として12~20mer程度であることを把握した。また前述の微量の酵素反応試料での電気化学計測を可能とする電気化学セルを設計し、最少5μLの反応溶液量で計測可能であることを確認した。
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