従来、標識や分子マーカーを必要とするDNA中の一塩基多型(SNPs)計測を、DNA中の各々の核酸塩基を同時に、識別、定量可能なナノカーボン薄膜電極を利用して、電気化学的に高感度に直接検出する簡便な方法を実現することを目的とする。平成22年度は、昨年度得られたナノカーボン薄膜表面の全核酸塩基に対する電極活性、ならびにDNAの直接計測に最適なDNA鎖長に関する知見に基づき、実在のDNA配列中からの非標識SNP計測へと展開した。具体的には以下の点を明らかにした。 1.核酸塩基の高感度測定のためのナノカーボン膜表面の評価 更なる安定・高感度測定のために、活性化ナノカーボン電極を用いてDNA酸化体の定量性を評価したところ、優れた検出限界(3nM)と測定再現性(C.V.1値=0.75%(n=12))を得た。これらの値は従来のカーボン材料(GC電極)に比べて、非常に優れた結果であった(検出下限7.2nM.、C.V値=9.8%(n=12))。これは本ナノカーボンがその表面平坦性を損なうことなく活性化可能であり、その結果、表面へのDNA塩基の吸着を抑制できたためである。 2.実在遺伝子に基づく塩基配列中の任意のSNP部位の直接電気化学検出 安定に測定可能なDNA試料を回収するため、ハイブリダイゼーション法とDNA分解酵素を駆使して、目的のDNA断片を抽出・回収し、電気化学計測を行った。具体的には、目的の配列を含むプローブDNAを固定化した磁性ビーズ上で、目的試料(p53癌抑制遺伝子のオリゴヌクレオチド)をハイブリダイズさせた後、一本鎖特異的DNA分解酵素(S1)を用いて、非二本鎖領域と未反応の一本鎖DNA試料を消化し、目的の配列(p53癌抑制遺伝子ののコドン248-249)部分DNA断片を抽出・回収した。この溶液を、微小体積測定用セルに充てんし、SNPs部位の直接計測を検証した。得られた計測法において、SNPsのバリエーションを検討したところ、コドン248のG->A、C->T変異、ならびに、コドン249のG->C、G-〉T変異の簡易検出が可能であった。
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