研究概要 |
研究者は最近Pd触媒によるアリールホウ酸と(E)-酢酸アリル類のγ位選択的立体特異的クロスカップリング反応を見出した。触媒量のPd(OAc)_2、1,10-Phenanthroline(あるいは2,2'-bipyiridine)、AgSbF_6存在下、R体の光学活性酢酸アリルに対してアリールホウ酸を60℃で作用させたところ、基質の構造に依存する事無くγ位および立体選択的にアリル-アリールカップリング反応が進行した。また本反応は、脱離基と求核剤が1,3-synの関係で立体特異的に進行しS体のカップリング生成物を与えた。本研究では、スルホンアミドキノリン-パラジウム二核錯体を設計合成し、これを触媒前駆体として用いたアリル-アリールカップリング反応について検討した。 アニオン性スルホンアミド部を有する配位子を含むパラジウム二核錯体が、フェニルホウ酸と光学活性な酢酸アリル基質のカップリング反応において有効な触媒前駆体として作用した。既に報告している触媒系と同様に反応は完全なγ位選択性を伴って進行した。立体特異性についても遜色なく1,3-synの立体化学で基質の光学純度をほぼ保ったカップリング生成物が得られた。本触媒系は銀塩の添加を必要としないという利点を有する。反応中間体として単核の中性なパラジウム種が推定される。本研究の結果より、本アリル-アリールカップリング反応においてパラジウム中心のカチオン性が必須ではないことが示唆される。
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