研究概要 |
本研究は、キラルブレンステッド酸触媒による新規ホモアリルアミン合成法の開発を主題に、21年度に引き続き、イミン類の細見-櫻井アリル化反応について研究を遂行した。21年度の研究において、ビナフチル基の3,3'位を強力な電子求引性を有するペンタフルオロフェニル基で置換したキラルリン酸の合成に成功し、本触媒20mol%存在下、3,5-tert-Bu_2C_6H_3基を有するベンゾイルイミンを用いることで、ほぼ完全なエナンチオ選択性(99%ee)の獲得に成功している。しかしながら、種々検討を行ったものの、収率の改善には至らなかった(~20%収率)。そこで、22年度は、収率の改善を目指し、以下の研究計画に準じて研究を遂行した。 (1)20mol%のキラルリン酸触媒による細見-櫻井アリル化反応の反応機構の考察 (2)触媒量のキラルリン酸・量論量のブレンステッド酸協同触媒系の開発 (3)協同触媒反応系の検証 低収率の原因がキラルリン酸の再生プロセスにあると考え、量論量のブレンステッド酸を添加剤として加えキラルリン酸の再生を試みた。大変興味深いことに、向山アルドール反応等で有用性が報告されていたフェノールやカルボン酸では収率は向上せず、ビフェノールから誘導したリン酸を用いた場合にのみ収率に改善がみられた。特に、ビフェニルの3,3'位を2,6-Me_2C_6H_3基で置換することで、収率エナンチオ選択性ともに良好な結果が得られた(83%収率、92%ee)。検証実験により、量論量のビフェノールから誘導したリン酸は、シリル化されたキラルリン酸エステルからキラルリン酸への再生に関与しており、従来の方法論とは異なるブレンステッド酸再生プロセスを経て反応が進行していることを明らかにした。
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