研究概要 |
過酸化水素を酸化剤としたアルケンエポキシ化およびアルカン酸化について、中心元素が異なるバナジウム2核置換ポリオキソタングステート触媒を適用した。リン中心のポリオキソタングステート触媒が非常に有効であり、バナジウム架橋ペルオキソ種が活性種であることを提案した。この成果はNature Chemistryに掲載された。理論計算からは、また、本年度では新たにバイオマスから誘導される多価アルコール類の選択酸化に取り組んだ。バイオディーゼルの副生物として現在供給過剰となっているグリセリンについて、2種類ある水酸基のうち2級の水酸基のみを酸素酸化してジヒドロキシアセトンを得る触媒の開発を行った。1級への選択酸素酸化は金ベースの触媒で近年多くの研究があるが、2級への選択酸素酸化は収率30%足らずの白金-ビスマス系触媒が知られるのみで困難である。グリセリン酸化は水溶媒中で行われるため、化合物が水に溶解しやすいバナジウムは触媒構成要素として不適であり、酸化物が水に溶解しにくい白金族・マンガン・チタン・ジルコニウム・レニウム・銅・銀を構成要素の候補として触媒の検討を行った。白金族および銀が触媒活性または選択性に優れ、さらにそれらを組み合わせることにより高収率でジヒドロキシアセトンを得ることに成功した(論文投稿準備中)。この成果は、グリセリン以外のバイオマス由来多価アルコール、たとえばエリトリトールや1,2,6-ヘキサントリオールのような物質の選択酸化にも展開可能と考えられる。
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