研究課題
有機化合物の迅速な骨格構築が可能となる炭素-炭素結合形成反応は非常に有力かつ効率性に優れた手法であり、とくに21世紀型の資源戦略的有機合成を考える上で、比較的安価で入手容易な遷移金属を触媒として用い、穏やかな条件下、官能基耐性にも優れた汎用性の高い反応の開発は、解決すべき大きな課題である。このような背景のもと、官能基耐性に優れ、取り扱いも容易な有機ボロン酸エステルを求核剤に用いた銅触媒による炭素-炭素結合形成反応の開発に取り組み、その結果、含窒素複素環カルベン(NHC)配位子を有する銅錯体を触媒に用いることにより、イサチン類のアリール化反応が温和な条件において効率よく進行することを見出した。ここで得られる生成物の3-ヒドロキシ-3-アリ-2-オキシンド-ルは、様々な生理活性物質に見られる骨格を有しており、銅触媒に用いる配位子として新規に合成した光学活性NHC配位子を利用することにより、反応を高エナンチオ選択的に進行させることにも成功した。また、今後の新たな炭素-炭素結合形成反応の開発を見据えて、本反応の機構に関する研究も行い、各反応中間体の単離・同定を達成し、その触媒サイクルを明らかにした。この知見に基づいて、イサチン類ばかりでなく他の基質に対する銅触媒を用いた有機ボロン酸エステルの付加反応への展開も開始し、現在までに電子不足アルケンなどいくつかの化合物のアリール化反応が進行することが分かっており、高効率反応実現への端緒を見出すことに成功している。
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