研究概要 |
直接的アリール化反応を基軸とするポリチオフェン類の新規合成法開発を行った。本研究以前に、パラジウム触媒存在下ホスファアルケン配位子を用いることによりDMF中でプロモチオフェン類の重合反応が低効率ながら進行することを見出していた。ポリチオフェンの溶解性が良いTHFを溶媒として用いて、主に配位子の検討を詳細に行った。その結果、酢酸パラジウムとトリス(o-メトキシフェニルホスフィン)を用いると、重合反応が効率的に進行することを見出した。しかしながら、系中での触媒活性種の分解が問題となった。そこで、酢酸パラジウムに代えて熱安定性に優れたHerrmann-Beller触媒を触媒前駆体に用いたところ、より高活性且つ安定性に優れた触媒系を構築できた。すなわち、2-ブロモ-3-ヘキシルチオフェンの反応は効率よく進行し、対応するポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)が分子量33,400、側鎖の位置規則性93%で得られた。分子量等に関してまだ改善の余地は残すものの、これまでのクロスカップリング反応を用いた重合反応と比べ、有機金属試薬の調製を必要としないことから、より効率的な合成法となりうる。またそれ故にこれまで合成困難であった構造を有するポリマーの合成法として確立すべく検討を行っている。一方、位置規則性が93%にとどまる理由は直接的アリール化反応における副反応であるホモカップリング反応によるものだと考えられ、反応経路の解明を合わせて行っている。これまで直接的アリール化反応における副反応の議論は乏しいが、本反応においては副反応による構造がポリマー鎖中に取り込まれる。反応時間により位置規則性の変化が見られることからも直接的アリール化反応の経路解明のよいプローブとなると考えられ、本研究において引き続き検討する。
|