研究課題
ハロゲン化物のかわりに、アニソール誘導体を用いる触媒的分子変換反応の開発を目指して以下の検討を行った。1.単環アニソール誘導体での鈴木-宮浦カップリング:オルト位にピリジンなどの配向基を導入することで、従来反応が進行しなかった単環のアニソール誘導体の炭素-酸素結合切断をともなった鈴木-宮浦反応が進行することを明らかにした。2.メトキシ基の特性を利用したオリゴアレーン類の合成:従来のハロゲン化物を用いるクロスカップリングとアニソールのクロスカップリングとを組み合わせることで、保護・脱保護を行うことなく、直接的にテトラアレーン合成することができた。3.炭素-酸素結合切断反応を鍵とするアミノ化反応の開発:アニソールを用いる触媒的変換はこれまで、有機金属試薬とのクロスカップリングに限定されていた。本研究により、アミンを求核剤として用いる、アミノ化反応へと展開できることを明らかにした。配位子としては、従来炭素-酸素結合活性化に有効であるとされてきたトリシクロヘキシルホスフィンではなくN-ヘテロサイクリックカルベン配位子が最適であることを見出した。さらに、本アミノ化反応は、アニソール誘導体だけではなく、アシル化フェノール誘導体にも適用可能であり、炭素-酸素結合を切断し、アミノ基へと置換することができる。以上の成果により、これまで不活性と考えられてきた、フェノール誘導体をハロゲン化物の変わりに種々の変換反応へと利用できることを示すことができた。
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Angewandte Chemie, International Edition in English
巻: 49 ページ: 2929-2932
Chemistry Letters
巻: 38 ページ: 710-711