研究課題
炭素-水素結合の活性化による直接分子変換反応は、様々な有機分子を直接官能基化することが可能であるために近年活発に研究されている。その触媒としては後周期遷移金属錯体が広く用いられているが、結合活性化に様々な酸化剤が必要になるなどの問題が生じる。一方、本申請者が着目している前周期遷移金属錯体は高原子価状態が安定であり、炭素-水素結合活性化を酸化剤が共存しない条件で達成可能であるものの、その錯体の不安定性によりこれまであまり研究が進んでいない。現在のところ、炭素-水素結合の活性化をアルキルハフニウム錯体により達成しており、特に基質を金属中心に接近させるために窒素をリンカーとして用いることで、σ-メタセシス機構によるフェニルピリジンや2,6-ルチジンの炭素-水素結合が活性化され、4員環、または5員環メタラサイクルがスムーズに形成することを見出した。また、それぞれの構造はその単結晶のX線構造解析によって明らかにした。この炭素-水素結合から直接炭素-金属結合に変換する手法を用いて種々の内部アルキンとの反応を行うと、挿入反応の進行に伴ってカップリング反応が進むことが分かった。反応メカニズムの考察により、後周期金属触媒反応とは異なり、反応の進行につれて炭素-水素結合課切断され、副生成物としては水素が生成するのみであるということが明らかになりつつあり、カップリング反応の進行に伴った金属塩等の副生成物を生じない環境調和型触媒となりうる知見が得られた。
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Organometallics
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