研究概要 |
各種ジアゾ化合物は特徴的な反応を示し,有機合成反応においてしばしば利用される。これまでに我々は対アニオンがCl^-のグアニジノジアゾニウム塩(アジドイミダゾリニウムクロリド,ADMC)が2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムクロリド(DMC)とアジ化ナトリウムから合成できることを見出し,ADMCが1,3-ジカルボニル化合物に対する良いジアゾ移動剤となることを明らかにしている。今回,ADMCを用いた反応の適用拡大を目指し,種々の求核剤と反応を行った。その結果,ADMCがナフトールと反応し,対応するジアゾナフトキノンを高収率で与えることを見出した。これまでジアゾナフトキノンはナフトールから三段階で合成されており,大幅なステップ数の削減が出来た。また,アジド移動能もADMCが有していることが明らかにした。すなわちカルボン酸にADMCを反応させると酸アジドが高収率で得られることが分かった。一方ADMCを調製する際に用いる,DMCは湿気に敏感でありやや取り扱いにくい化合物であり,またADMCは単離できない。グアニジノジアゾニウム塩を用いる反応を,より簡便に行うためにはこの塩が爆発性のない安定な固体として単離できることが望まれていた。そこで各種グアニジノジアゾニウム塩の対アニオンを変え,その性質を調べたところ,対アニオンがPF_6^-のジアゾニウム塩(ADMP)が爆発性のない安定な固体として単離できることが分かった。こうして単離されたジアゾニウム塩は,1,3-ジカルボニル化合物以外にも,アミンへもジアゾ移動し簡便にアジド化合物が合成出来ることが分かった。
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