研究概要 |
本研究は、遷移金属ヒドリド種を活用した新規多段階結合形成反応を開発することを目的としている。本研究者は既にルテニウムヒドリド触媒存在下、α,β不-飽和アルデヒドとベンジルアルコールとの反応により水素移動反応を伴ったクロスアルドール反応が進行し、α-ヒドロキシメチルケトンが良好な収率で得られることを見いだしている。本反応により得られるα-ヒドロキシメチルケトンを高沸点有機-フルオラス両親媒性溶媒であるF-626中で加熱すると、レトロアルドール反応が進行しケトンが得られることを見いだした。また、ルテニウム触媒を用いたクロスアルドール反応とレトロアルドール反応をワンポットで実施することにも成功している。また、ルテニウムヒドリド触媒存在下、ボロン酸とエノン、アルデヒドとの三成分型反応を検討した。期待した三成分型生成物は得られなかったが、ボロン酸とアルデヒドとの反応によりケトンが得られることを見いだした。ルテニウムヒドリドがアルデヒドに付加して生成するアルコキシルテニウムとボロン酸とのトランスメタル化を鍵とするものと考えている。さらにエノンの二量体である、2-アシルジヒドロピランと芳香族ボロン酸を酸触媒存在下反応させると、環縮小反応が進行し双環性ボロン酸エステルが高収率で得られることを見いだした。また、イリジウム触媒を用いた脂肪族カルボン酸の脱カルボニル化反応によりアルケンが得られること、ロジウム触媒を用いた1,4-エンインエステルと一酸化炭素との[5+1]型付加環化反応によりレゾルシノール誘導体が得られることを見いだした。
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