研究概要 |
人工合成した多糖は,構造明確で純粋な生成物が得られることから,多糖の特性を評価する上で重要である.また,天然から得られる多糖とは物理的性状の異なるものが得られる可能性があり,新素材としても有望である.多糖の人工合成法のうち,化学-酵素法は,他の合成法と比較して純粋な糖鎖が得やすいという特長がある.本研究ではモノマーである活性化糖誘導体を,水溶液中において直接活性化法によりヒドロキシ基の保護を行うことなく大量合成し,それに引き続き酵素触媒重合を行うことで,人工合成多糖の新規大量合成法の確立を目指し,本年度は以下の研究計画に基づき行った. 1.優れた脱離基を持つ活性化糖誘導体モノマーの大量合成 以前の研究において,塩化4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム(DMT-MM)を用いることで,活性化糖誘導体モノマーを合成することが見いだされている.本手法をセロビオースで行ったところ,1gの原料から収率63%,0.92gのDMT-セロビオシドが得られた.本年度の目標である1gの活性化糖誘導体の合成は達成できなかったが,原料の仕込み量を増やすことで,容易に大量合成が可能であることが分かった. 2.糖オキサゾリン誘導体の大量調製法の確立 これまでの研究で,塩化2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウム(DMC)を活性化剤として用いることで水中において,非常に高い収率で対応する糖オキサゾリン誘導体を合成できることが見出された.しかし,本手法を大量合成スケールに適用したところ,オキサゾリン誘導体の精製が困難であることが判明した.このため,大量合成を行うためには,DMC代替の活性化剤が必要であり,その合成と反応性について検討を行った.
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