固体高分子電解質(SPE)は、様々な塩を溶解し、比較的高いイオン伝導度を発現できることから、フレキシブルで軽く液漏れの心配がない安全な次世代イオニクス系ソフトマテリアルとして期待されている。申請者は、10^<-4>S/cm以上のイオン伝導度および0.5以上のLiイオン輸率の両立が可能な新しいSPEの材料設計を目的として、スメクタイト系層状化合物のSPEへの利用に着目した。本年度は、代表的なスメクタイト系クレイとしてサポナイト(S_<Na>)を用い、超臨界二酸化炭素(scCO_2)の特異的な効果を利用したナノ分散コンポジット電解質の構造・物性評価を行った。小角X線測定からは、scCO_2処理によるP(EO/EM)/S_<Na>複合体中のサポナイトの層間距離が変化しないことが分かった。ところが、凍結乾燥サポナイト(S_<Na>F)およびその複合体中のS_<Na>の層間距離に由来するピークはブロードになったことから、S_<Na>の周期性が乱れ、分散性が向上したことが示唆される。また、S_<Na>Fを用いることで、ポリマー中のS_<Na>の分散性が向上した。SEM測定からは、S_<Na>Fの構造がS_<Na>よりも明らかに変化しており、微細化していることが分かった。構造が微細化することで、負電荷層が均一に分散した試料が得られたと考えられる。各種試料の複素インピーダンス測定の結果からは、S_<Na>Fの充填によってイオン伝導度が大きく向上することが分かった。さらに、scCO_2処理によるイオン伝導度の向上は、通常のS_<Na>複合体が約15倍であったのに対して、S_<Na>F複合体では約35倍であり、その値は40℃で10^<-6>S/cmであった。P(EO/EM)/S_<Na>複合体を基準に考えると、凍結乾燥およびscCO_2処理によって、イオン伝導度は約100倍向上した。また、P(EO/EM)/S_<Na>複合体のT_gとT_mはscCO_2処理によって上昇したのに対し、P(EO/EM)/S_<Na>F複合体のT_gとT_mはほとんど変化がなかった。これは、高分子鎖の熱運動を介して協同的にイオン移動する従来のポリエーテル系とは異なるメカニズムによってイオン伝導性が発現していることを示唆している。
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