研究概要 |
C=C結合とC-C結合が交互に連なったシンプルな構造を持っポリエンは、その骨格上をπ電子が比較的自由に動くことができる"電気導線"としての性質を備えている。遷移金属の酸化還元特性を融合させることによって得られる物質群に特異な電子・光特性を見出すことが期待できる。本研究は、ポリエンのπ電子系をスペーサー(架橋配位子)、レドックス活性な遷移金属のd電子系をアンカーとする新たな有機π共役-遷移金属複合系の構築を行ない、電子・光機能材料開発へ展開するための機能評価を検討する。 21年度はまず分子導線となるポリエン(Ar-(CH=CH)n-Ar)誘導体を合成した。具体的には合成しやすいテトラエン(n=4)の両末端にアリール基(Ar)として金属配位子として知られる2,2-ビピリジルならびにレドックス活性なフェロセン(Fc)を導入したポリエンについて検討した。両者ともテトラエンの両末端にアリール基を導入することで、大気中でも分解せずに安定に存在していることがわかった。後者は例えばシクロペンタジエニル基を有するルテニウム錯体と反応することにより、テトラエン上にルテニウムが二つ結合したルテニウム-鉄4核錯体を選択的に与えることも見出した。また、NMR測定によりテトラエン骨格は二つのルテニウムに配位することにより、s-シス体に構造変化することもわかった。
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