研究概要 |
フェノール樹脂の合成に新しい概念を導入することにより,その精密重合の道を開き,そして材料としての高いポテンシャルを見出してきた。新世代フェノール樹脂の研究をさらに深化させるには,基礎的な物性の研究と実用に耐えうる材料への展開が重要である。本研究では,フェノール樹脂の世界では想像だにされなかった世界を拓くべく,挑戦的なテーマを用意した。(1)隣接基の効果により一種の立体規則性高分子を合成できることがわかった。1,3,5-トリメトキシベンゼンや3,4,5-トリメトキシトルエン由来の高分子は,メチレン基を挟む隣り合うベンゼン環が直交した構造であることがわかっている。このような構造は,屈折率や高いアッベ数が発現する理由の1つであると考えられる。物性や機能からのフィードバックも含めて,さらなる立体規則性高分子の設計・合成を行った。(2)反応場による高分子構造の作りわけを利用して1段階目に反応点を残した直鎖状高分子を合成し,2回目に架橋反応を行えば,ナノロッドを構築できると考えられる(マイクロリアクターの利用やせん断をかける等の工夫が必要である)。このようにstepwiseに反応場を変化させることにより,高次に構造が制御されたナノ組織体の合成を行った。数十nmからサブミクロンスケールの素材は,有機コンポジットのフィラーとしても興味深い。(3)モノマーをデザインすることにより,フェノール樹脂では例のないラセン構造の構築を行った。モノマーにキラリティを導入する方法で合成した。
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