L-フェニルアラニンメチルエステルを過剰のエチレンジアミンと反応させることによりアミノ酸含有ジアミンモノマーを合成した。このジアミンモノマーを二硫化炭素と反応させ、さらにジハロゲン化物モノマーと重縮合することにより、光刺激型動的共有結合部位として期待されるジチオカルバメート基を主鎖中に有するポリペプチド類似ポリマーを合成した。得られたポリマーの数平均分子量は7000から10000程度であった。また、CDスペクトル測定においてはジチオカルバメート基に由来するコットン効果が観測され、ポリマー主鎖が高次構造とっていることが示唆された。D-フェニルアラニンを原料として用いたポリマーについても合成したところ、L-フェニルアラニン由来のポリマーと同じ波長域において対称的なコットン効果が観測された。 続いて、光照射による結合組換えについて検討するために、ポリマー溶液に高圧水銀灯からの紫外光を照射した。その結果、照射時間の増加とともに分子量分布が最確分布に近づいていくことが示された。また、数平均分子量が8000であるポリマーと低分子ジチオカルバメート化合物との混合溶液への光照射について検討したところ、照射時間の増加とともに分子量の低下が確認され、8時間後には数平均分子量は4100となった。以上の結果より、ジチオカルバメート基を光刺激型動的共有結合として用いた結合組み換えが実際に可能であることが明らかとなった。 また、ポリ(L-リシン)とアルデヒドとの反応により、側鎖に動的共有結合部位としてのイミン結合を有するポリマーを合成し、低分子アルデヒド存在下でのポリマー側鎖の組み換え反応について検討したところ、比較的速やかな組み換えの進行が確認された。
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