研究概要 |
側鎖にアミンを持つポリペブチドであるポリ(L-リシン)の塩酸塩をトリエテルアミンと反応させたのちにp-トルアルデヒドとの高分子反応を行うことにより、動的共有結合であるイミン結合を側鎖に有するホモポリペプチドPLTIを合成した。次に、種々の官能基(フェノール性OH基、アルコール性OH基、イミダゾリル基)を持つアルデヒドとPLTI側鎖のイミン結合との動的結合組換えに伴うポリペプチド側鎖構造の変化について、重水素化2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)を溶媒として用いた1H-NMRスペクトル測定により追跡した。その結果、反応時間の進行に伴い1H-NMRスペクトルにおけるアルデヒド-C(O)-H由来のピーク比に変化が現れ、側鎖組換え反応の進行が確認された。一方、側鎖組換えに伴うポリペプチドの高次構造の変化についてTFE溶媒中でのCDスペクトル測定により追跡したところ、組換えの進行に伴いスペクトル形状に変化が現れ、側鎖官能基への多様性の導入が高次構造の変化を引き起こすことが示された。また、1H-NMRスペクトルにおいて側鎖の組成比がほぼ一定になりたのちにもCDスペクトルの形状変化が続いており、この結果は「側鎖組成の変化」ではなく「側鎖配列の変化」に基づいた高次構造変化が起こっていることを示唆していると考えられる。以上の結果より、側鎖に動的共有結合を有するポリペプチドの合成および側鎖組換え反応が実現可能であること、および側鎖組換えに伴うコポリマー配列変化が高次構造の変化を誘発することが明らかとなった。
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