研究概要 |
平成21年度において,自己重付加可能なサブフタロシアニンの合成および精製方法について検討を行い,この合成方法を確立することに成功した.とくに薗頭反応によって合成した目的化合物の単離が非常に困難であったため,単離した化合物の不斉分割を行う前に,この自己重付加性サブフタロシアニンの反応性について検討を行った.この結果,反応性および溶解性に起因する問題から,自己重付加反応の効率はあまり高くないことがわかった,また平行して行った多量体の形成反応において,反応溶媒の極性が反応性に重要な影響を及ぼすという予備的な知見を得た.これらの知見をもとに,反応溶媒によって反応性を制御しながら自己重付加性のないサブフタロシアニンとの段階的に重付加反応を行うことにより,選択的に樹状構造の構築を行うことに成功した.またこの反応検討において,微量の不純物が反応収率に重大な影響を与えることが判った.本研究の目的である不斉分割について検討を行うためには,自己重付加性サブフタロシアニンの合成収率の向上と,樹状構造を構築する際の反応条件の最適化を行う必要がある.サブフタロシアニンの反応性についての研究例は非常に限定的であり,ここで得られた知見はサブフタロシアニン分子を取り扱う上で,非常に重要な基礎的知見を含む内容である.とくに軸配位子交換反応における反応溶媒の選択では,極性溶媒を使用するとサブフタロシアニンが分解してしまう傾向をしめすが,トリエチルアミンを極性溶媒としてトルエン溶媒に添加した系において反応が速やかに進行し,これらの問題を解決できることが判った.
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