研究概要 |
ホルモース反応とは、塩基性条件下においてホルムアルデヒドからホルモースと呼ばれる糖が形成する反応である。通常、得られるホルモースは、複雑な糖および糖アルコールの混合物で、実用的な有用性はない。有用な糖を選択的に形成する選択的ホルモース反応の実現を目指し、微小空間を利用したホルモース反応について調査した。本年度は、微小空間として、多孔性アルミナとエーロゾルOT(AOT)逆ミセルのウォータープールに着目した。 糖存在下におけるゾルゲル反応によって調製した多孔性アルミナをX線回折、窒素吸着測定によりキャラクタライズした。その結果、調製時に添加する糖の量、焼成温度などにより、得られる多孔性アルミナの結晶性、細孔径や細孔径分布が制御できることを見出した。このようにして調製した多孔性アルミナは市販の活性アルミナよりも強い塩基性サイトを有するため、ホルモース反応の効率的な触媒として働き、炭素数の多い糖を形成することが分かった。 AOT逆ミセルのウォータープールをホルモース反応のための孤立微小空間として用いるため、いくつかの条件下において、動的光散乱法によってウォータープールの流体力学半径(R_w)を決定した。この結果に基づいて、R_w=2,5nmのウォータープール中でのホルモース反応を行ったところ、いずれの場合も通常のホルモース反応で観測される誘導期が観測されず、ホルムアルデヒド2分子からグリコールアルデヒドを形成する反応が加速され、AOT逆ミセルのウォータープールはホルモース反応の特殊な反応場となることが明らかとなった。
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