メタクリル酸エステルのステレオブロックポリマーおよびコポリマーの合成法の確立に注力し、構造評価、特性について検討した。アクリル酸ブチルブロックを中央に有し、その両端にイソタクチックおよびシンジオタクチックポリメタクリル酸メチル(it-PMMAおよびst-PMMA)の2つのブロックを有する立体規則性トリブロック共重合体の合成に成功した。それぞれの立体規則性ブロックの立体規則性は3連子レベルでおよそ90%と十分に高く、また分子量分布も1.2~1.3程度と比較的狭いものであった。このポリマーのキャストフィルムは透明で、室温でゴム弾性を示した。DSCにより立体規則性PMMAブロックのステレオコンプレックス(SC)形成挙動を観測したところ、メルト状態から10℃/分程度の比較的速い冷却でもSC形成が効率よく起こることが分かった。この速いコンプレックス形成は立体規則性には見られない現象であるが、SC形成がこのポリマーが熱可塑性エラストマーとして機能する上で物理架橋として作用すると考えており、望ましい特性である。このポリマーの合成法を展開し、その他のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなるブロック共重合体の立体規則性制御法として十分な汎用性をもつものであることも実証している。メタクリル酸ベンジルとメタクリ酸メチルのジブロック共重合体の立体規則性制御をおこない、ステレオコンプレックス形成に基づく溶液中での会合体形成についても検討した。光散乱、NMRを用いた構造解析により、特異なひも状の超分子会合体を形成していることが示唆されている。
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