研究概要 |
平成21年度は,(1)高分子試料の調整,(2)測定チャンバー・セルの設計と製作,(3)分子力学によるシミュレーションの準備の3点を行った.(1)では,poly (N-isopropylacrylamide)およびpoly (N,N-diethylacrylamide)の立体特異性ラジカル重合を行い,m比が50~90%の間で立体規則性の異なる試料を数種類用意することができた.(2)では,赤外線透過窓を有する高真空チャンバーを赤外装置の測定室内に配置するための治具の設計・製作,水蒸気を導入するための配管や圧力測定装置の設置を行った.チャンバー内の真空度は10^<-3>Pa以下にすることができた.また,作成した高分子試料を,本予算によって購入したスピンコーターによって赤外測定にとって最適な状態で薄膜化するための条件を探索した.この結果,上述の試料では10wt%のAcetone溶液を,3000rpm程度で回転する3mm厚のCaF_2円形窓板上に滴下すると良いことがわかった.このサンプルの赤外スペクトルを真空チャンバー内にて測定すると,ほとんど水の含まれていない薄膜の測定ができた.また,ここに蒸気圧を変化させながら水蒸気を吸着させると,水分子の吸着による赤外スペクトルの変化を明確に検出できることが明らかとなった.吸着された水のスペクトルは,高分子の種類によっても立体規則性によっても変化する.さらに得られるデータには,非常に高い再現性があることも分かった.(3)では,現有する計算機システムにTinkerや分子力学法を用いた配座探索パッケージCONFLEXを組み込み,計算を行えるような環境を整えた.モデル化合物について,TinkerではMM2やMM3を用いた構造最適化ができ,CONFLEXでは各種力場を用いた配座探索ができることを確認した.
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