研究概要 |
平成22年度は,立体制御されたアクリルアミド系高分子への水の収着挙動を,(1)赤外分光法と(2)QCM法によって調べた.また,(3)CONFLEXを用いた分子力場計算をダイマーモデルについて行った.(1)では,立体制御されたpoly (acrylamide), poly (N-isopropylacrylamide), poly (N,N-diethylacrylamide), poly (N-ethylacrylamide)の薄膜試料を作成し,様々な水蒸気圧下で水を収着させて赤外スペクトルを測定した.乾燥状態における高分子のC=O伸縮振動に関連するアミドIバンドは,立体規則性によって大きく変化することは無かった.一方,水蒸気の収着後には,アミドIバンドに明確な変化が観測されたため,アミド基まわりの水分子の配向は立体規則性に依存すると考えられる.(2)では,アニーリング前後における薄膜試料に対する水蒸気の収着量をQCMによって測定した.アニーリング前では,水蒸気収着に対する立体規則性の影響が顕著に現れたが,アニーリング後にはその差は小さくなった.また,立体制御していない高分子の水蒸気収着量は,アニーリング前後で大きく変化しなかった.これらの結果から,高分子薄膜に対する水蒸気収着量は,キャスト溶媒中の高分子鎖の状態に大きく依存していることが示唆された.立体規則性は,溶媒中での高分子の拡がりに影響を与えている可能性があり,これが薄膜化したときの水蒸気収着量に間接的に影響すると考えられる.(3)については,分子力場計算によってpoly (N-isopropylacrylamide) (PNiPAM)の親水性が立体規則性によって変化する原因を分子論的に解明する試みを行った.この結果については,すでに論文化した.
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