研究概要 |
平成23年度は,(1)立体制御されたPoly(N-ethylacrylamide)(PNEA)およびPoly(acrylamide)(PAA)薄膜への水蒸気収着過程における赤外スペクトル測定とその解析,(2)QCM法によるPNEAおよびPAA薄膜への水蒸気収着量の測定,(3)PNEA三量体モデル化合物についての分子力学シュミレーション,(4)立体制御されたPoly(N-ethylacrylamide)(PNiPA)に対するタンパク質収着実験,の4点を行った,(1)(2)では,平成21~22年度に確立した装置および方法を用いて立体制御されたPNEAおよびPAAの薄膜を作成し,水蒸気収着過程におけるる赤外スペクトルを観測した.PNEAの赤外スペクトルの水収着による変化およびその立体規則度依存性はPNiPAと類似の結果を示したが,PAAは全く異なる挙動を示すことがわかった.QCM法による水蒸気収着量と赤外スペクトルの測定結果から,PNiPAとPNEAの水収着様式はアミド基への直接的水素結合であることが推定されるが,PAAの場合にはその実験的証拠はない.これは側鎖の構造が一級アミドか二級アミドかによって水収着挙動が異なることを示している.(3)については,平成22年度に確立された分子力学法による二量体モデルの自由エネルギー計算法を三量体モデルに応用し,三連子の立体構造が高分子の溶解性にどのような影響を与えるのかを調べた.(4)では,meso比が82%および76%のPNiPA(水に不溶)の薄膜を作成し,QCM法を用いて水溶液中でのタンパク質(ウシ血清アルブミン)収着量を測った.meso比が6%の差でもタンパク質収着量は4倍以上異なり,立体規則度のわずかな違いがタンパク質とPNiPAの相互作用に大きな影響を与えることが分かった.
|