研究代表者が創り出したパラ位連結フェノール環状ホスト分子"Pillar[5]arene"をビルディングブロックとした分子チューブの創成を行った。Pillar[5]areneは、フェノール誘導体を連結しているメチレンの結合様式が、カリックスアレーンの場合のメタ位ではなくパラ位である。そのため、(1)優れた対称性、(2)上下に高い反応性の水酸基を持つという特徴を有している。 Pillar[5]areneをビルディングブロックとして積み重ねていくと、Pillar[5]areneの(1)優れた対称性から、非常に真っ直ぐで剛直な分子チューブが得られると予測される。そこで本年度は、上下に配する10個のフェノール性水酸基の分子間水素結合を利用して、Pillar[5]areneがチューブ状に配列した分子チューブを得ることに成功した。水素結合が働きにくいアセトン溶媒では、Pillar[5]areneはファイバー構造を形成しなかった。一方で、水素結合が働きやすいクロロホルム溶媒にPillar[5]areneを分散させ加熱を行うことで、直径が200nm程度のファイバーを得ることができた。溶媒への分散・加熱という非常に簡単な手法により、分子チューブを得る方法を確立することができた。
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