研究概要 |
ペンタメチレンスペーサーを有する環状2核ビス(サリチルアルジミナト)パラジウム錯体による超音波応答性瞬時ゲル化現象を拡張し、中心金属として白金を用いることで超音波刺激応答性発光増大現象を初めて達成している。本年度は、超音波刺激に応答した発光増大現象において重要な要因となる分子会合様式と発光の関係を明らかにした。 ラセミ混合物の白金錯体のシクロヘキサン溶液は短時間の超音波照射(40kHz,0.45W/cm^2)に応答し瞬時にゲル化し、このゲルはUV照射下(365nm)で黄色発光する。生成したゲルは長時間安定であり発光を保持するが、加熱により溶液に戻すと発光しなくなる。一方、光学的に純粋な白金錯体の同様溶液は、超音波照射でゲル化せず発光もしない。部分的に光学活性な白金錯体を用いたゲル化の進行に伴う鏡像体過剰率の変化に関する詳細な研究から、本ゲル化が、(R)(S)(R)(S)...とヘテロキラル会合により進行することが明らかとなった。さらに、電子顕微鏡観察から、生成するゲルは、超音波照射時間が長くなるほど、繊維状構造体のバンドル構造が増大する事が分かった。ゲル繊維への集合は超音波照射時間に関わらず定量的に進行する事から、この超音波照射時間による発光制御は、集合単位の単純な嵌合構造の積層化がもたらす配位平面性の強化、固定化によって生起する事が示された。
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