ユニークな分子内ポテンシャル勾配を自発的に形成するπ共役樹木型分子の性質を利用して、光合成蛋白中心などで見られる、経路と方向を精密に制御した電子移動系を構築することが目的である。特に、デンドリマーは、この光合成の原理を再現し、長寿命電荷分離を実現するのに最適な系であると考えている。 本年度は、デンドリマー末端にアントラキノン構造を結合したモデル分子を合成し、電子移動の速度を見積もった。 コアから末端への電子移動である電荷分離反応における速度定数k_fと、逆方向の再結合反応における丸についてそれぞれ速度定数を各世代のデンドリマーに対して得ることに成功した。デンドリマーのコアと末端間の電子移動であることから、デンドリマーの流体力学半径を電子移動の距離として利用し、k_fとk_bについてそれぞれ対数プロットを行うことで減衰係数を算出した。電荷分離方向についてはβ=-0.14A^<-1>、再結合方向についてはβ=-0.28A^<-1>となり、電荷分離が樹木型骨格で促進されていることを確認した。また、末端にフラーレンやナフタレンジイミドといった他種の電子受容物質を共有結合によって連結したデンドリマーについても合成に成功し、これらの電子移動について解析を進めている。
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