コアに亜鉛ポルフィリン、末端にナフタレンイミドを修飾したデンドリマーの光誘起電子移動を過渡吸収分光測定により詳細に調べた。第1世代と第4世代を比較すると、電荷分離状態であるラジカルイオンから基底状態への電荷再結合反応速度は高世代化によって3.1×10^6(s^<-1>)から0.45×10^6(s^<-1>)と15%まで低下していることが判明した。この際の速度減衰をデンドリマーの流体力学半径の変化から換算するとアテネーションファクターでβ=-0.1 Å^<-1>に相当する値となる。電気化学測定などから求められている電子移動速度の減衰などから考えると比較的良い一致を示している。一方、一重項励起状態からラジカルイオン状態への電荷分離反応速度は高世代化によって0.2×10^9(s^<-1>)から0.45×10^9(s^<-1>)と予想に反して2倍に増加した。この増加の理由は現在の所確実な説明がないが、電荷分離反応においては下り傾斜の勾配を有するデンドロン部位の軌道を介した電荷移動が生起していると考えられる。また、電子勾配を有するフェニルアゾメチンデンドリマーと比較するために、同等の結合様式を有しており窒素原子を炭素原子に置き換えたフェニレンビニレンデンドリマーを用いて電子移動の検討を行った。デンドリマーの世代数と、電荷分離、再結合それぞれの電子移動速度を測定すると、フェニルアゾメチンでは非対称な減衰を示すのに対して、フェニレンビニレンでは等価な減衰を示した。フェニルアゾメチン骨格が世代数増加に伴って相対的にコアから外部への電子移動が促進される挙動が改めて示された。
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