研究概要 |
代表的な天然色素であるクロロフィルーaを出発原料とした機能性色素分子の開発例として、オプトード用のアルコールセンサー分子を設計・合成し、化学センサーへ応用した際の性能について検討した。クロリン環の7,8位に四酸化オスミウムを付加させ硫化水素で切断することによりジオールとし、つづいて酸で脱水して安定な8-オキソバクテリオクロリン骨格に変換した。センシング部位にはQy軸上の3位にトリフルオロアセチル基を導入し、また17位側鎖末端のメチルエステルを長鎖アルキルエステルに変えることで脂溶性をもたせた誘導体を合成した。新規開発した色素分子とPVC、膜溶媒(DOS)、および添加剤(TDMACl)をTHFに溶かし、石英ガラスプレート上にスピンコーティングすることでオプトードセンサー膜を作製した。色素量と添加剤の割合について最適化をはかったところ、もっとも特性の良いセンサー膜はpH6.8のリン酸バッファー中で、エタノール濃度0.3%から25%の間で可逆的な吸収と蛍光の変化を示した。エタノール濃度が増えると701nmの蛍光増加と751nmの蛍光減少というレシオメトリック応答があり、検出限界と定量限界はそれぞれ0.1%と0.4%であった。さらに、高濃度(25%)エタノール溶液の10時間連続測定においても蛍光応答に目立った劣化は認められず、作製したセンシング膜の安定性が確認された。本研究成果は水溶液中のエタノール濃度定量に成功したという点で意義があり、飲料の品質管理や工業分析に直接つながる重要な成果であると考えられる。
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