研究概要 |
環境保護の観点から、石油系燃料中の硫黄分のさらなる低減が求められている。石油中の硫黄分の除去を行う水素化脱硫(HDS)プロセスには硫化処理したCoMo/AlO3系触媒が用いられているが、硫黄分規制値の強化に対応するために新規の高活性HDS触媒の開発が望まれている。前年度までに、申請者は新しいHDS触媒として貴金属リン化物(NM_XP_Y)系触媒の調製に成功した。一昨年度の研究により、生成するNM_XP_YのP/NM比が異なること(Rh_2P;P/Rh=0.5,Pd_<4.8>P;P/Pd=0.2,Ru_2P;P/Ru=0.5)を明らかにした。そこで、本年度は最適なP/NM比(仕込み比)について検討した。 Rh、PdおよびRu触媒のHDS活性はPの添加により向上した。しかしながら、Pt触媒ではPを添加すると活性は低下した。また、活性が向上したNM-P触媒の最適P担持量はRh-P触媒では1.5~2.2wt%、Ru-P触媒では1.5wt%、Pd-P触媒では0.8~1.5wt%となった。このように最適P担持量が異なるのは、NM_XP_Yの組成が異なるためであると推測された。P担持量0.8~15wt%では、いずれのNM-P触媒においても還元を低温で行うとNMが生成しやすく、高温ではNM_XP_Yが生成することがXRDの測定結果からわかった。さらに、P担持量が増加するとより低い還元温度でNM_XP_Yが生成し、これはTPRの結果とも一致した。また、P担持量3.0wt%のRh-P触媒を高温で還元するとRhP_2(P/Rh=2)が生成した。Ru-P触媒ではP担持量2.2wt%を境目に、生成するNM_XP_YがRu_2P(P/Ru=0.5)からRuP_2(P/Ru=2.0)に変化した。さらにCO吸着量から1活性点当りの活性(TOF)を求めたところ、低P/NMのNM_XP_Yは高P/NMのNM_XP_Yよりも高活性であることを明らかにした。以上のことから、Rh-PおよびRu-P触媒の最適P担持量がPdの場合よりも高いのは、生成するNM_XP_YのP/NMが大きいためであると考えられる。
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