未利用のセルロース系バイオマスとして砂糖黍の絞り粕であるバガスを試料として実験に用いた。バガスに含有されるセルロース成分を効率的に得るために水蒸気爆砕処理、マイクロ波照射処理を検討した。糖化に用いるセルロース分解酵素は明治製菓製のメイセラーゼを用いた。前処理を一切施さないバガスの還元糖収率は、バガス中のホロセルロースに対して6%であったのに対し、粉砕処理を施したバガスの酵素糖化による還元糖収率は20%であった。また、マイクロ波照射処理(200℃、20分)および水蒸気爆砕処理(蒸煮圧力20気圧(212℃)、蒸煮時間5分)ではそれぞれ、68および90%の還元糖収率が得られた。このことにより、水熱反応を用いた処理はセルロース系バイオマスの前処理に適していることがわかり、バガスへの水蒸気爆砕処理での最適条件を見出すことができた。 また、次に市販グルコースを炭素源とした場合グルコース消費量に対するε-ポリリジン(ε-PL)の収率は、8.0%(ε-PL生産量18.0g/投入グルコース量225g)であることを1L容量の攪絆型バイオリアクターを用いて確認した。さらに、バガス由来糖を炭素源として用いてε-PL発酵生産を行ったところ、消費グルコースに対する収率は4.4%(ε-PL生産量12.7g/投入グルコース量286g)であった。このように収率の低下が見られたのは、バガス由来糖液中に前処理の際に生成したリグニン由来物質等が放線菌の生育およびε-PLの発酵の阻害に関与していると考えられたためであり、糖液の精製法の検討の必要性が示唆された。この課題を克服することにより、バイオマス由来糖からのε-PLの発酵生産は可能であり、原料のコストを抑えた機能性ポリマーの生産法の確立が期待できる。
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