研究概要 |
未利用のセルロース系バイオマスとして砂糖黍の絞り粕であるバガスを試料として実験に用いた。バガス中に含まれるセルロース成分を効率的に酵素により加水分解するための前処理として水蒸気爆砕処理を行った。水蒸気爆砕処理条件は水蒸気圧力15,20,25,30,35atmおよび蒸煮時間を5分とし処理した。得られた処理物にセルロース分解酵素であるセルラーゼを添加し酵素糖化を検討したところ、水蒸気圧力20atmにて最も高いグルコース量(360mg/1g-乾燥処理物)が得られた。しかし、リグのセルロース処理物を高温で処理する際に酵素反応阻害物質が生成するといった過去の知見をもとに、水蒸気爆砕処理物を蒸留水で洗浄した残渣を酵素糖化した。その結果、水蒸気圧力20atmで得られたグルコース量は増大し、1g乾燥処理物から475mgが得られた。これは、グルコースの理論収率のほぼ100%に値する。このことにより、酵素反応阻害物質は簡便な水洗浄で除去することができることが明らかとなった。さらに、水蒸気爆砕処理物由来のグルコース液を基質とし、D-乳酸発酵菌であるLactobacillu delbrueckiiに添加し、D-乳酸の生産を検討した。ここでも基質として、水蒸気爆砕処理したバガス、それを水洗浄した残渣、さらにそれをメタノール洗浄した残渣の3種類を検討した。水蒸気爆砕処理したバガス由来のグルコース液からは初期グルコース濃度20g/1から最大D-乳酸は13.5g/1得られたのに対し、水洗浄残渣、メタノール洗浄残渣からはそれぞれ15.5g/1、15.6g/1が得られた。D-乳酸発酵結果においても同様に、水やメタノールで前処理物を洗浄することは発酵阻害に関与する物質を除去できることが明らかとなった。
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