アルキルフェノール類の水素化反応により得られるアルキルシクロヘキサノール類は香料原料として有用な化合物である。工業的には担持貴金属触媒と有機溶媒を使用した液相水素化法で製造されており、シス体とトランス体の二種のアルキルシクロヘキサノール異性体が得られるが、香気の点からシス体の選択率を向上させることが課題となっている。本研究では、有機溶媒の代替として超臨界二酸化炭素を溶媒として利用し、低環境負荷かっ高選択的にシス体のアルキルシクロヘキサノール類を合成するための触媒反応技術の開発を行った。 平成21年度は4-イソプロピルフェノールの選択的水素化反応を検討した。超臨界二酸化炭素溶媒中の4-イソプロピルフェノール水素化反応では、活性炭担持ロジウム触媒が高活性であった。超臨界二酸化炭素溶媒の利用により、有機溶媒使用(2-プロパノール)に比べ2倍の速度で反応を進行させることができ、反応時間の短縮や貴金属触媒使用量の削減が可能であることを示した。さらに、シス体の割合(=シス体/(シス体+トランス体))を、有機溶媒使用の73%から、超臨界二酸化炭素溶媒の利用により78%まで向上させた。また、超臨界二酸化炭素溶媒中では脱水酸基体の副生が抑制されることを明らかにした。反応生成物の時経変化や、選択性の二酸化炭素圧力依存性の結果より、超臨界二酸化炭素溶媒中では、部分水素化体が触媒表面からの脱離-反転-再吸着を経てトランス体に水素化される経路が抑制されるために、シス体への選択性が向上したと考察した。
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