環境負荷低減の観点から有機溶媒を使用しない化学合成プロセスの開発が望まれている。アルキルフェノール類の水素化反応により得られるアルキルシクロヘキサノール類は香料原料として有用な化合物であり、工業的には担持貴金属触媒と有機溶媒を使用した液相水素化法で製造されている。本研究では、有機溶媒の代替として超臨界二酸化炭素を溶媒として利用し、香気の点から望まれるシス体のアルキルシクロヘキサノール類を高選択的に、かつ、低環境負荷で合成するための触媒開発を行った。 活性炭担持ロジウム触媒が超臨界二酸化炭素溶媒中での4-イソプロピルフェノール水素化反応に高活性であることを見出しており、さらに活性・選択性を向上させることを目的として、触媒への酸添加効果を調べた。活性炭担持ロジウム触媒に無機酸を添加することにより、得られる4-イソプロピルシクロヘキサノールのシス体の割合(=シス体/(シス体+トランス体))を、無添加の78%から88%まで向上させることに成功した。さらに、活性炭担持ロジウム触媒への酸添加により、反応完結までの時間を約2/3に短縮できた。反応生成物の時経変化を調べることにより、4-イソプロピルフェノールから直接4-イソプロピルシクロヘキサノールが生成する反応経路と、4-イソプロピルシクロヘキサノンを経て4-イソプロピルシクロヘキサノールが生成する反応経路があることを明らかにした。反応速度解析を行い、酸添加により4-イソプロピルシクロヘキサノンがシス体の4-イソプロピルシクロヘキサノールに水素化されるステップが促進されることを明らかにした。
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