環境負荷低減の観点から有機溶媒を使用しない化学合成プロセスの開発が望まれている。アルキルフェノール類の水素化反応により得られるアルキルシクロヘキサノール類は香料原料として有用な化合物であり、工業的には担持貴金属触媒と有機溶媒を使用した液相水素化法で製造されている。本研究では、有機溶媒の代替として超臨界二酸化炭素を溶媒として利用し、香気の点から望まれるシス体のアルキルシクロヘキサノール類を高選択的に、かつ、低環境負荷で合成するための触媒開発を行う。 本年度は主に、超臨界二酸化炭素溶媒と担持ロジウム触媒を用いた4-tert-ブチルフェノール水素化反応に対する触媒担体、リン酸修飾、および、触媒還元温度の影響を調べた。種々の担体に担持したロジウム触媒を用いて反応を行ったところ、触媒担体によるcis-4-tert-ブチルシクロヘキサノール選択率の序列は、活性炭>アルミナ>H-Yゼオライト>シリカの順となった。しかし、これらをリン酸で修飾した場合、選択率の序列はシリカ>活性炭>H-Yゼオライト>アルミナの順となり、シリカ担体の場合にリン酸添加の効果が大きくなることが分かった。一方、アルミナ担体ではリン酸添加の効果がほとんど無いことが分かった。また、触媒の還元条件の影響を検討し、還元温度を低下させるとcis-4-tert-ブチルシクロヘキサノールの選択率が向上することを見出した。リン酸で修飾したシリカ担持ロジウム触媒の還元温度を検討し、93%のcis-4-tert-ブチルシクロヘキサノール選択率を達成した。
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