研究概要 |
本研究では、ラミニンへの細胞接着によって引き起こされる様々なレセプターの相互作用を、ラミニン由来の合成ペプチドを用いて解析してきた。5種類あるラミニンα鎖間の生物活性比較を目的に、α1鎖の配列を網羅した合成ペプチドを作成、活性評価した。その結果、110種類の合成ペプチドから14種類の活性ペプチドを同定した(Arch.Biochem.Biophys., 2010)。また、ペプチド-高分子多糖複合体の医用材料への応用に向けて高分子多糖(細胞の足場)の物性が及ぼす生物活性についてペプチド-キトサンとペプチド-アルギン酸を用いて検証した。その結果、シンデカンを介する細胞接着は足場の固さや極性に依存しないが、インテグリンを介する細胞接着は足場依存的に生物活性をコントロールできること(Biopolymers, 2010)、シンデカン結合性ペプチドとインテグリン結合性ペプチドを混合することで、足場物性に依存しないでインテグリン結合活性を促進できることがわかった(Biomaterials, 2010)。さらに、ラミニンα鎖LG4ドメイン由来のシンデカン結合ペプチドAG73と同じくラミニン由来のインテグリン結合ペプチドEF1の受容体特異的な細胞接着活性を検証した。その結果、シンデカンと結合する細胞接着は早く、インテグリンと結合する細胞接着は遅いが細胞伸長を強く促進することがわかった。二種類のペプチドを混合させると細胞接着も細胞伸展も強く促進されることがわかり、ペプチドを用いて受容体間相互作用による生物活性の相互作用を証明し、ラミニンα鎖LG4ドメインの機能を模倣することが出来た(FEBS Letters, 2010)。以上の結果から、合成ペプチドを用いてタンパク質機能の再現を目指す本研究計画が非常に有用であることが示された。また、ペプチド-高分子多糖複合体が細胞の活性をコントロールしながら材料として応用できる可能性が示された。
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