本研究では、DNAインク検出技術に応用可能な新規蛍光プローブを搭載したDNAチップの開発と、それらを応用した新しいDNAインク検出法の開発を行ってきた。本年度は、まず、昨年度までに得られていた候補となっているプローブを用いて溶液系での塩基識別能の評価を行った。標的DNAとハイプリダイズさせた後に実際に蛍光スペクトルの測定を行った結果、これまでのプローブでの検出結果を上回る高いS/N比を示すことがわかり、従来のプローブに比べて優れた塩基識別能を有することが判明した。この新しい蛍光プローブは、従来法のような標的DNAの蛍光標識化やハイブリダイズの条件検討、洗浄操作が不要であることから目的とするDNAインクの検出に非常に適すると考えており、現在実際の検出系により近い系での評価を行っている段階である。また、同時に本年度は、これまでに開発してきた蛍光ヌクレオシドよりも合成が容易で、検出しやすい長波長で発光する蛍光分子の開発も行った。多数の化合物をコンピュータを用いた分子モデリングによりデザインし、それらの情報を基に候補となる化合物を選び、実際に多数合成した。得られた蛍光ヌクレオシドのモノマーの段階での蛍光特性を評価した結果、その中のいくつかの化合物で従来のヌクレオシドに比べて優れた蛍光特性を示すことがわかった。またそれらの化合物は従来のものに比べてシンプルな構造を有しており、現在それらを導入した蛍光プローブの作成に着手した段階である。
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