研究課題
標的遺伝子の発現を強く抑制することができるsiRNAは、がんなどの難治性疾患の治療法として期待されている。このsiRNAの医薬への応用には、ヌクレアーゼに対する分解耐性の獲得や細胞内導入性の向上、副作用の低減などを克服する必要がある。本研究では、これらの問題点を解決できる、機能性物質融合型siRNAを独自の手法で開発した。この機能性物質として、脂肪酸(パルミチン酸、ラウリン酸)、ペプチド(HIV Rev NESペプチド、MAPKK NESペプチド)、芳香族化合物(フェニル基、ベンジル基)、ポリエチレングリコールなどを選択した。その中でも特に、脂肪酸をsiRNA(21塩基長)に直接結合させた脂質修飾型SiRNAは、高い細胞導入性、分解酵素耐性、遺伝子発現抑制能を示した。また、27塩基長の2本鎖RNAに脂肪酸を結合させた脂質修飾型長鎖2本鎖RNAは、上記の脂質修飾型siRNAに比べ優れたRNA干渉効果を示した。さらに、非対称な2本鎖RNAとその脂質修飾型2本鎖RNAについても高いRNA干渉効果を保有することを見出した。次いで、これらの脂質修飾型2本鎖RNAを担がんマウスの腫瘍内に投与した結果、脂質修飾型2本鎖RNAは未修飾のsiRNAに比べ、優れたRNA干渉効果を示した。また、脂質修飾型2本鎖RNAと遺伝子導入剤の複合体をマウスの尾静脈より導入した結果、多くの2本鎖RNAが肝臓へデリバリーされていることが明らかとなった。これらの機能性物質を融合した2本鎖RNAは、RNA干渉反応における問題点を一掃でき、今後の医療応用への可能性を大きく広げるものと期待される。
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