研究概要 |
オキシトシンなど約半数の生理活性ペプチドの活性発現に必要とされるC末端アミド構造は、酵素PAM^*の触媒作用によって生成される。PAMは、PHM^<**>ドメインおよびPAL^<***>ドメインからなる2頭酵素であり、この酵素の機能不全は致死的である。本研究ではこれらの反応機構を明らかにするため、酵素中に含まれる金属イオンの役割について検討を行った。昨年度までに、キレート剤や還元剤の種類や濃度の検討を行う事で2頭酵素PAMからほぼ全ての金属を除去することに成功し、さらに金属除去PAMおよび金属再構成PAMを用いて反応解析を行うことで、酵素活性の発現に必要な金属イオンを明らかにした。複数の金属サイトが存在する2頭酵素PAMではそれ以上の解析が困難であったため、本年度はアミド化反応の後半の触媒作用を担うPALを用いて詳細に検討を行った。今回新たに樹立したPAL発現細胞からPALを精製し、得られたPALから含まれる金属イオンの除去を行った。この金属除去PALおよび金属再構成PALを用いて反応解析を行うことで、PAL活性の発現に必要な金属イオンを明らかにした。さらに金属除去PALに添加する金属イオンの種類によってPAL活性を促進または阻害することを突き止めた。これら一連の研究によって2頭酵素PAMに含まれる全ての金属イオンの役割が明らかにされた。また、本研究で得られた金属除去および金属再構成酵素は2頭酵素PAMの機能解明につながるのみでなく、結晶構造解析や新規な酵素反応の発現などに大きな可能性を見いだした。 ^*PAM ; peptidylglycine -amidatingmonooxygenase,^<**>PHM ; peptidylglycine -hydroxylating monooxygenase,^<***>PAL ; peptidylamidoglycolate lyase
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