研究概要 |
本研究では、層状複合アニオン化合物に関して、過去の研究と材料探索の過程から見出した設計指針に基づき、新物質合成と機能性の探索を行った。本年度は特に、申請者らが新たに発見した層状酸硫化物(Cu_2S_2)(Sr_4Sc_2O_6)について評価を行った。本物質の電子構造計算を行ったところ、類似した構造を持つもののブロックの厚みが異なる(Cu_2S_2)(Sr_3Sc_2O_5)(こちらも以前申請者が発見)と類似していることが分かった。これらの物質のフォトルミネッセンス測定を行い、どちらの化合物においても低温でバンド端に励起子に由来する高速な発光を示すことを確認した。発光波長はいずれも約370nmで温度と共に減衰したが、温度依存性には大きな違いがあり、(Cu_2S_2)(Sr_3Sc_2O_5)が温度と共に発光が急激に減少し、室温ではほぼ消光したのに対し、(Cu_2S_2)(Sr_4Sc_2O_6)は室温でも低温の50%程度の発光強度を維持することが分かった。これらの違いは結晶構造の違いに由来していると考えられ、今後詳細な検討を行う予定である。 また、設計指針に基づき、酸硫化物に限らず複合アニオン化合物に属する様々な物質の探索を行い、鉄系超伝導体(Fe_2As_2)(Ca_8(Mg,Ti)_6O_<18>)など様々な物質を発見した。これらのうち(Cu_2S_2)(Sr_3Sc_2O_5)・(Cu_2S_2)(Sr_4Sc_2O_6)などと同様の電子構造を持つものについては引き続き発光特性を始めとする評価を行う予定である。
|