液晶物質が自発的に形成するナノ構造を利用したバルクヘテロ接合型の太陽電池の実現のため、平成21年度はナノ構造材料の構築、均一な薄膜形成の検討および、バルクヘテロ接合型の太陽電池に適した電極材料の検討を行った。 ナノ構造材料の構築においてはモデル材料として共役高分子と液晶材料の混合系を検討し、液晶相においては目的のナノ構造が形成できていることを過渡高電流測定法より確認した。また、その共役高分子をドーパントとすることで液晶材料へのP型ドーピングに成功した。均一な薄膜形成に関しては加熱しながら液晶相でスピンコートをすることで結晶性の低分子材料でも均一な薄膜が形成できることを見出した。太陽電池実現に重要な問題となるキャリア生成効率に関しては純度が高いサンプルほどキャリア生成効率が高いことを見出し、N型材料となるフラーレン誘導体の精製方法の検討を行った。 バルクヘテロ接合型の素子はバルク内での構造が対称であるため、正孔・電子の輸送方向を決めるため、電極として正孔をブロックし電子のみを流す陰極材料、電子をブロックし正孔のみを流す陽極材料が必要となる。酸化モリブデンと液晶材料の電圧・電流測定より正孔は注入されるものの、電子はブロッキングされることが見出した。このような電極材料は、太陽電池に向いた陽極材料になりうるものと思われる。 平成21年度はソーラシミュレータの購入と太陽電池特性評価システムの構築を行い、デバイスの試作、およびその評価を行うための環境を整えた。
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