液晶物質が自発的に形成するナノ構造を利用したバルクヘテロ接合型の太陽電池の実現のために、平成22年度は均一な薄膜形成の検討および液晶相だけでなく、液晶相を経由した結晶薄膜も、薄膜形成、移動度、キャリア生成も含めて検討を行った。均一な薄膜形成の検討においては液晶相でスピンコートすることで均一な薄膜が形成できることを確認した。さらに、室温で結晶相である棒状液晶材料に関しても高温域の液晶相で加熱スピンコートすることで均一な薄膜が形成でき、その後冷却して結晶化させた膜も均一な薄膜になることを確認した。棒状液晶の結晶相の移動度を電界効果トランジスタ作製通じて評価したところ、1cm^2/Vsを超える値を示し、液晶材料の結晶薄膜が太陽電池の輸送材料として非常に有用であることが明らかになった。一方、室温で結晶である円盤状液晶(HHTT、H4T、8H_2Pc)においては通常のスピンコートでアモルファス的な均一な薄膜が作製できた。その上で金属電極およびガラス基板の貼り合わせ法を用い、蓋構造を持たせ、液晶相に加熱することで太陽電池に向いた薄膜縦方向へ輸送に有利な配向制御ができることが明らかになった。この円盤状材料を用い太陽電池デバイスを作製したところ短絡光電流の大きさを比べると配向制御した方が無配向状態に比べて大きくなり、配向させることで太陽電池特性が向上することが確認できた。現在のところフタロシアニン誘導体(8H_2Pc)とフラーレン誘導体(PCBM)の混合系を用いた結晶薄膜の太陽電池ではエネルギー変換効率は0.22%と小さいが、このサンプルではカラムナー液晶相が喪失しており、液晶相を喪失しない条件を選ぶことで、今後高効率な太陽電池デバイスの実現を目指していく。
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