研究概要 |
液晶物質が自発的に形成するナノ構造を利用したバルクヘテロ接合型の太陽電池の実現のために、前年度明らかになった高濃度の混合系における液晶相が喪失する問題に対して検討を行った。モデル材料として円盤状液晶であるトリフェニレン誘導体、棒状液晶であるターチオフェン誘導体を用い、フラーレン誘導体(PCBM)との様々な濃度の混合系での相転移挙動を調べた。どちらの液晶材料でもPCBMが1mol%以下の低濃度の混合系では相転移挙動の変化しないものの、それ以上の高濃度の混合系では、液体に近い低次の液晶相では液晶相が発現しない。それに対して、結晶状態に近い高次の液晶相においては高濃度の混合系でも液晶相が形成されることが偏光顕微鏡観察やXRD測定より明らかになった。 過渡光電流測定法より混合系における電荷輸送特性を調べた。棒状液晶、円盤状液晶等ともに低次の液晶相ではPCBMが数ppmオーダでトラップとして働き、その低次の液晶相の液体性のためイオン伝導になってしまう。一方で高次の液晶相に関しては1mol%もの高濃度の混合系でも移動度の減少が見られず、キャリアの伝導パスとPCBMの存在している箇所が分離できていることが明らかになった。更に、キャリア生成効率を確認したところPCBMを混合した系では1桁以上上昇しており、マクロな分離ではなく、ミクロな分離構造(ナノ構造)ができていることが示唆された。 そこで、高次の液晶相を発現するような分子設計を行い、様々な分子を合成、電荷輸送特性の検討を行った。高次の液晶相を示す材料の電荷輸送を調べたところ、高次の液晶相で最大0,5cm^2/Vsの移動度、トランジスタ構造を用いた結晶薄膜の移動度を評価したところ5cm^2/Vsに達することが明らかになった。 このように、高次の液晶相を有する材料を用いることで、ナノ構造の作製が可能で、高キャリア生成、電荷輸送パスの分離、高キャリア移動度を有するバルクヘテロ型太陽電池が実現できるものと考えられる。
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