研究概要 |
本研究は,「中性典型元素へのヘテロ原子の配位に基づく機能の制御」という概念を新機能性材料の創製に関する一般的な手法へと発展させるため,ホスホールを研究主体として実施した。典型元素が通常の配位数から高配位状態を取りうることを利用して,これまでに合成されてきた典型元素を含むπ電子系に高配位典型元素を導入することで,分子のHOMO/LUMO準位のチューニングや新しい機能の発現が期待できるπ電子系典型元素化合物の創製を目指した。 (1) ヘテロ原子の配位可能なホスホールの簡便合成法開発 旧来の手法を改良することで,リン原子上の置換基の異なるホスホール環の簡便合成法の確立を目指した。本手法は,合成および単離過程において、リン特有の不快な臭いを生じないことが特徴である。平成21年度は、本手法によるホスホール類の合成とその単離手法の改善を中心に検討した。リン原子上の置換基としては、2,6-ジメトキシフェニル基と2,4,6-トリメトキシフェニル基に絞って検討した。その結果、ワンポット反応で収率20~30%程度で合成できることがわかった。但し、TLC分析で近接する副生成物も数種類存在するため、今後も、継続的な反応および単離に関する条件検討が必要である。電子物性材料としての展開を考慮すると精製は重要な問題と考えている。 (2) 配位状況を含む固体構造 1-(2,6-ジメトキシフェニル)テトラフェニルホスホールに関して、単結晶X線構造解析を行った。リンと2,6-ジメトキシフェニル基酸素の原子間距離は、ファンデルワースル半径の和より短くなっている。また、文献既知の1,2,5-トリフェニルホスホールと比較するとリン-フェニル炭素結合は同程度であるが、他の2つのリン-炭素結合の平均値は、約1pm短くなっていることが分かった。
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