研究概要 |
本研究では,「中性典型元素へのヘテロ原子の配位に基づく機能の制御」という概念を新機能性材料の創製に関する一般的な手法へと発展させるため,ホスホールを研究主体として実施した。 (1)ヘテロ原子の配位可能なホスホールの簡便合成法開発 三塩化リンを使用しないことで不快なにおいが発生しない合成法利用し、1-(2,6-ジメトキシフェニル)-2,3,4,5-テトラフェニルホスホール(A)、1-(2,4,6-トリメトキシフェニル)-2,3,4,5-テトラフェニルホスホール(B)に加え、1-(1-ナフチル)-2,3,4,5-テトラフェニルホスホール(C)および1-(2-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェニル)-2,3,4,5-テトラフェニルホスホール(D)の合成に成功した。それぞれ多段階反応を1つのフラスコで行ない、いずれも全収率30%程度で単離可能となった。 (2)配位状況を含む固体構造の解明 ホスホール(A)に加えて(B)および(C)の単結晶が得られたので、X線結晶構造解析を行なった。ホスホール(A)についても、昨年度、R値が大きかったため再検討を行なった。ホスホール(D)については、再結晶によって測定可能なサイズの単結晶を得ることはできなかった。今後も再結晶条件の検討を行なっていきたい。ボスホール(A)に関しては、独立した2つの構造が存在していた。また、(A)(B)共に、リンと2,6-ジメトキシフェニル基酸素の原子間距離は、ファンデルワースル半径の和より短くなっている。リン原子周りの結合角の平均値は、それぞれ101.0°(A),103.63°(B)および103.48°(C)であり、ほぼ三脚型構造のままであった。 (3)新機能性材料(有機FET用材料)としての検討 ボスホール(A)および(B)について、共同研究機関でボトムコンタクト型素子を作成し評価した結果、p型応答が得られることが分かったが、ホール移動度は10^<-8>程度であった。
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