研究概要 |
本研究では,「中性典型元素へのヘテロ原子の配位に基づく機能の制御」という概念を新機能性材料の創製に関する一般的な手法へと発展させるため,ホスホールを研究主体として実施した。 (1)ヘテロ原子の配位可能なホスホールの簡便合成の活用 平成22年度までに亜リン酸トリフェニルを用いるホスホール類の簡便合成法を確立した。本手法を再検討したところ、全収率40%程度での合成が可能となった。更に他のアリール基導入にも応用した。一例として、4-トリフルオロメチルフェニル基(以後、f基)およびペンタフルオロフェニル基の導入にも成功した。なお、これまでの合成物の比較から、f基等のフェニル基上の2,6位に置換基を持たないホスホール類は、リン原子の酸化耐性小さいことが分かった。 (2)ボスホールを置換基あるいは配位子とするイリジウム錯体の合成検討 イリジウム錯体の合成を行うため、複数のアプローチを検討したが合成単離には至らなかった。 (3)ホスホールの固体構造の検討 平成22年度までに2,6-ジメトキシフェニルポスホール他3種類のX線構造解析に成功しており、加えて、2-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェニルポスホールの再結晶を試みたが、X線結晶構造解析に使用可能なサイズの単結晶は得られなかった。 (4)上記ホスホール類の物性検討 各種ホスホールのUVおよび蛍光測定を行った。リン原子上のアリール基の違いにより、溶液中の蛍光特性と固体状態での蛍光特性に大きな違いがあることを見出した。固体蛍光に関しては、2,6位に置換基を持つホスホールの強度は比較的小さいが、フェニル、ナフチルおよびペンタフルオロフェニルポスホール等の内部量子収率は30%を超えることが分かった。今後、有機EL素子への応用も期待される。また、これらの有機FET素子への応用についても検討したが、特筆すべき特性は得られなかった。
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