研究概要 |
昨年度までの成果により開発したホスホニウム型イオン液体修飾電極を鉄複核錯体が溶解した有機溶媒中に浸漬することで,目的の鉄複核錯体を導入したイオン液体修飾電極を得た,得られた修飾電極の評価は表面反射赤外分光測定および各種電気化学測定により行った.赤外吸収スペクトルでは,導入した鉄複核錯体に特徴的なピークが観測され,鉄錯体の電極上への固定化が示唆された。また電気化学測定では,導入した鉄複核錯体に由来する酸化還元波が観測され,電極上での鉄錯体の存在が確認された.また得られた酸化還元電位は溶液中の錯体の電位に近く,以前に報告した錯体を直接修飾した系に比べて,極端な電位のシフトは見られなかった,従って当初の目的通り,イオン液体修飾電極を用いて鉄錯体を電極上に修飾することにより,溶液中に近い状態で電極上に鉄錯体を固定化することに成功した. 得られた鉄錯体修飾電極を用いて酸素の電気化学的還元反応を行ったところ,酸素の還元に伴う触媒電流が観測され,電極上の鉄錯体が電気化学的に酸素を還元していることが示唆された.また回転リング-ディスク電極を用いた解析では,酸素還元反応に関わる反応電指数は約3.2電子と見積もられた.これは酸素の2電子還元による過酸化水素の発生の他に,4電子還元反応の進行に伴う水の生成が同時に起こっていることを示唆する結果であった. 以上の結果より,イオン液体修飾電極を利用して鉄複核錯体を電極上に固定化することにより,錯体による酸素の還元電位を変化させることなく,酸素の還元反応を行う事に成功した.また酸素の還元は2電子還元だけでなく,4電子還元も同時に起こっていること実験的に観測することに成功した.
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