アニオン交換膜形燃料電池(AMFC)では、セル内が塩基性であるため、カソード触媒に比較的安価且つ資源的にも豊富なAgやMn酸化物などの非Pt系電極触媒の使用が可能となり、燃料電池の低コスト化が期待できる。また塩基下では、一般にカソードにおける酸素還元反応(ORR)が促進されるため、従来にない安価且つ高性能な燃料電池の構成が可能と期待される。本研究では、これまでパイロクロア、ペロブスカイト、酸化物ナノシート構造体等の金属酸化物系カソード触媒を創成し、電解質に炭化水素系アニオン交換膜を用いた次世代形燃料電池である新規AMFCの開発を進めてきた。また同時に、AMFCの課題とされるカソード供給ガス中のCO_2の発電特性に及ぼす影響を詳細に調査することで、実用化へ向けたセル設計や運転条件等に関する指針を検討してきた。本年度は、触媒開発では昨年度最も高いORR活性を示したペロブスカイトLa_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3(LS_<0.4>M)について高比表面積を有す炭素粉末へ高分散担持した触媒の調整や新規触媒としてホランダイトK_xMnO_2・yH_2Oの共沈法及び水熱法による合成を試み、得られた試料について回転リングディスク電極法によるORR活性評価並びにAMFC発電試験を行なった。その結果、いずれの試料も従来のAg/C触媒より高いORR活性(ORR開始電位:0.9V vs.RHE、四電子還元選択率:85%以上)を示し、特に担体としてケッチェンブラック(KB)を用いたLS_<0.4>M/KBでは、単セル試験にて昨年度の2倍以上の79mW cm^<-2>の高出力が得られることを実証した。更に、水熱合成後にK^+の一部をH_3O^+置換したホランダイトでは炭素担持せずに62mW cm^<-2>を示し、今後膜電極接合体の最適化により100mW cm^<-2>を超える実用レベルに近い高出力が得られる見通しを付けることに成功した。
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