研究概要 |
新奇イオン電池として,ナトリウムイオン電池系を検討した。Na^+のサイズと拡散パスに着目し、ナトリウムを鋳型とする酸化物を合成、層状のO3型NaMO_2(M=Cr, Ni_<1/2>Mn_<1/2>)の合成経路を設計して所望の単一相を合成し、ナトリウムインターカレーションによる固相レドックスを調べたところ、120mAh/gの高容量で安定なナトリウムインターカレーションに基づく電気化学活性を見出した。その充放電中の粒子構造・結晶構造変化は、TEM、SEM、XRD、遷移元素の価数変動をXAFSで追跡し、充放電過程の調査を行った。さらに、既に見出した鉄酸化物(Fe_2O_3、Fe_3O_4)のナノ結晶の効果について、リチウム系で安定作動する知見を生かして、ナトリウム系へ応用した。その結果、ナノ結晶酸化鉄は150mAh/gの大容量で可逆性の高い電気化学的Na挿入反応が起こることを見出した。さらに、炭素系材料を負極に適用して調査を行ったところ、黒鉛では負極活性を示さないのに対して、難黒鉛化炭素を用いることで高い活性が発現した。しかし寿命が短く二次電池性能としては不十分であったため、電解液に用いる鎖状,環状カーボネート溶媒、電解質塩について地道な最適化を進めた結果、過塩素酸ナトリウムを含む炭酸プロピレン電解液中で、100サイクル以上にわたり240mAh/gの高容量負極を達成した。この充放電反応のメカニズムを探るために、各種分析装置による解析を行うとともに、上述の正極および負極を組み合わせたフルセルの充放電の最適化を現在行っている。
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