人と環境にやさしい新しいエレクトロニクスとして、有機半導体による、薄さ、軽さ、柔らかさを備えた次世代電子素子の実現が期待されている。さらに、有機材料の溶解性を活かせば、エコロジカルな印刷法によるデバイスの低コスト・大量生産が可能であると考えられる。我々は前年度に開発したオール溶液プロセスによる有機電子デバイスの作製法に基づいて、さらにデバイスの特性を向上させるべく様々な界面特性に着目した研究を行った。さらに、有機半導体の結晶性がデバイス特性の決め手となることを重視し、溶液から塗布した有機半導体が溶媒蒸気によって基板上で自発的に結晶化する新しいプロセスを開発した。この溶媒蒸気アニール法で形成した有機単結晶から作製したトランジスタ素子において、世界最高レベルの移動度である9.1cm2/Vsを実現し、論文発表と特許出願を行った。この有機単結晶の直接形成技術は、溶媒に可溶な材料であればどんな有機半導体分子にも例外なく適用できる。有機単結晶を基板上で直接形成する技術は、特に溶液プロセスでは他に例がなく、溶媒蒸気に暴露するという簡便な方法で単結晶の直接形成に成功した本発明は、様々なデバイス開発につながると考えられる。加えて、有機トランジスタへの電荷注入メカニズム、電荷輸送モデルに関する研究をフランスグループと共同で行い、3報の論文を発表した。また、溶液プロセスで作製した電子デバイスの転写プロセスについての研究を行った。
|